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2012.4.10                       Since 2011

~ 転ばぬ先の労務管理メルマガ ~

淀川労務協会  “実録”  労務 虎の巻  第11号

毎月1回配信
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Point1.『関西最大級の規模』

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― 淀川労務協会 -  です。

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このメールマガジンでは、私どもがこれまで顧問サービスとしてご提供してきた人
事・労務・社会保険等に関する事例や情報の中から、特に皆様に知って頂きたい事
例を毎回2ケース厳選しご紹介させて頂いております。

――――目次―――――――――――――――――――――――――――

【ケースNo.21】 [試用期間での解雇] 採用後14日以内に行う解雇

【ケースNo.22】 [退職の撤回] 退職予定の社員が突然、撤回を申し出てきた

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【ケースNo.21】

入社後、14日以内に解雇すれば解雇予告手当(平均賃金の30日分)を支払わずに
済むと聞いたことがあります。当社は試用期間を3か月で設定しているのですが、
本採用が困難と早々に判断できた場合には、14日以内に解雇した方が良いですか?

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労働基準法22条但書4号の規定によると、「試みの使用期間中」の者は、14日以
内であれば同法19条の解雇制限の適用を受けずに解雇しうると定めており、つまり
は雇用開始後14日以内に解雇した場合には、解雇予告手当の支払いは免れるとされ
ています。

この試みの使用期間について、「過去に形成された熟練を評価して採用・不採用を決定
するための実験を目的とする期間の定めのある特別の労働契約(特別契約説)」とし、
「試用開始後14日以内の解雇については合理的理由も予告も必要ではない」と解釈す
る説もありますが、「実験」義務とはいえ実際には使用者の指揮命令による労務の提供
が為されている事実関係から、この期間についても労働法的解釈が当然に適用され、つ
まりは合理的な理由のない解雇を認めることは許されないと判断すべきです。
尚、この「試みの使用期間」とは、労働基準法が定める試用期間であり、これとは別に
会社が独自に試用期間を数か月と設定することに差支えはありません。

次に試用期間満了による解雇に求められる合理性の程度についてですが、最高裁判所は、
「試用期間の性質をどう判断するかについては、就業規則の規定の文言のみならず、当
該企業内において試用契約の下に雇用された者に対する処遇の実情、特に本採用との関
係における取扱いについての事実上の慣行のいかんをも重視すべき」としたうえ、「大
学卒業の新規採用者を試用期間満了後に本採用しなかった事例はかつてなく、雇入れに
ついて別段契約書の作成をすることもなく、ただ、本採用に当たり当人の氏名、職名、
配属部署を記載した辞令を交付するにとどめていた」という慣行が認められる事案にお
いて、試用期間中の雇用契約は、使用者の解約権が留保された契約であり、本採用拒否
は留保解約権の行使、すなわち雇入れ後の解雇に当たると判事しています。(三菱樹脂
事件S48.12.12)

確かに雇用開始後14日までの解雇については、解雇予告手当を支払わずに済むという
金銭的メリットがあります。

しかしながら、一般的に会社独自の試用期間中の当初の14日間(試みの使用期間)に
ついては本採用の判断の機会さえ設けられていない事がほとんどであり、また、会社独
自の試用期間は2~6カ月の期間をもって設定される事が多く、つまりは本採用の判断
には通常その程度の期間が必要であると会社が認めているとも言える訳ですから、14
日での本採用拒否が有効とされるには、かなり厳しい合理的根拠(最初の14日間の勤
務で客観的に誰しも判断し得るような、相当の勤務不良等)が求められるものと考える
べきです。

「辞めさせるのであれば最初の14日間で判断した方がいいよ」とだけ説明した気軽な
アドバイスを良く耳にしますが、以上をもとに慎重に判断される事をお勧め致します。

 
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【ケースNo.22】

先日、ある従業員が「1か月後に退職致したくお願い申し上げます」という文書を持って
きたので受理しました(その際、本人には特に何も告げませんでした)。 その後、代替
要員の確保が必要なため、新たに求人をかけ中途社員の採用が内定したのですが、退職を
申し出た従業員が突然、「やっぱり事情が変わったので会社に残ります」と言ってきまし
た。そんな勝手な話は受け入れられないので、突っぱねてもよいでしょうか?

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お気持ちはわかりますが、結論から申しますと拒否する事は困難でしょう。

まず、退職届には以下の2つの種類があるものと考えて下さい。

 
1)「雇用契約の解約通知」(=いわゆる退職届):従業員から会社に対して、会社の判
断如何に関係なく一方的に退職の意思を通知するケース

[文例] ( ~略~ 、平成○○年○月○日をもって貴社を退職させて頂きます。)

 
2)「退職の申し込み」(=いわゆる退職願):従業員から会社に対して、「辞めたいと
考えているのですがいかがでしょうか?」と願い出るケース

[文例] ( ~略~ 、平成○○年○月○日をもって貴社を退職致したく、ここにお願い申し
上げます。)

 
簡単に申しますと「届出」と「許可」の関係と同じで、1)は相手方の承認を要さない一
方的な届出、2)は相手の承認を要する許可願と解されるという事です。

今回のケースでは文面から、2)の退職の申し込みと解され、これに対する諾否を会社は
示していない訳ですから、本人からの撤回は基本的に可能と考えられます。

尚、この話とは別に、2)のケースで会社は応諾の意を示していないのであれば本人は辞
めることはできないのではないか・・・との疑問が生じるかもしれませんが、民法627条
1項に基づき退職の申し込みから2週間を経過したことをもって、会社からの承諾があった
ものとみなし労働者は基本的に退職することが可能です。(逆に会社側がこの2週間ルール
を採用して退職したものと見做すことは出来ません)

一般的に退職願の文面には「退職届」なのか「退職願」なのかの判別が困難な表現が用いら
れることが多いです。
というのも契約社会の欧米諸国とは違い、日本人には特に退職といったセンシティブな場面
で相手を刺激しない中庸的表現を美徳とする一面があるからです。
「もうかりまっか?」には、「ボチボチでんなぁ」です。

このようなトラブルを避けるためにも退職が申し入れられた場合には必ず書面で受領し、そ
れがどのような文面であったとしても、かならず遅滞なく受諾(乃至、慰留)の意思を出来
れば書面で示すことが重要だと考えます。

 
※ このようなケースであっても退職撤回の申し入れにより会社に不測の損害を与え、
多大な迷惑をかけるような特別な事情や、退職手続きが進められていることを労働者が十分
に知りうる状況にありながら何ら異議を唱えていないような事実があれば、退職の撤回が不
可能となることもあります。

 
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☆本件についてのお問い合わせは淀川労務協会コンサルティング業務部門までお願いします。
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