淀川労務協会の三浦です。

先般、広瀬一郎氏の講演に参加して参りました。

 

広瀬氏は電通在職時にサッカーワールドカップなどの数々のスポーツイベントのプロデュースに尽力された後に独立。現在、スポーツビジネスのコンサルティングやスポーツ選手の人材育成等を手掛ける㈱スポーツ総合研究所の所長をされている方です。

所謂、「人事の専門家」が行うヒトのマネジメントに関するセミナーにはこれまで多数参加して参りましたが、若干のマンネリを感じており、スポーツを切り口としたマネジメント論を展開される広瀬氏のレクチャーから、これまでとは違う何らかの“新しいアプローチ”のヒントを得たい・・・と考えたのがこの講演参加の動機でした。

講演の中で広瀬氏が我々にこう語りかけます。

“「スポーツ」とは何でしょう?”

スポーツである為には、ただ単にカラダを動かすだけでなく、「勝ち負けのつくゲーム」である必要があります。また、ゲームであるためには、「ルール」「審判」「相手」の3者が必要になります。 どれが欠けてもゲームは出来ません。

次に広瀬氏はこう問いかけます。

“それでは、「スポーツマンシップ」とは何でしょう?”

英国の有名な辞書で「SPORTSMAN」という言葉を調べると、「GOOD FELLOW(=いい奴)」と説明されています。

スポーツマンが「いい奴」だとすれば、スポーツマンシップは「スポーツマンが身に付けておくべき素晴らしいこと」だということがわかります。

また、「スポーツマンシップ」を煎じ詰めると“RESPECT(=尊重)すること”だというヨーロッパの言葉も広瀬氏から紹介されました。

「尊重する」とは、「決まっているから」、「守らないと怒られるから」ではなく、「各々がその意味を理解して、その価値を判断した上で認める」ことです。

先にも述べたとおり、スポーツで尊重すべきものは「ルール」「審判」「相手」であり、この3つを尊重することは、すなわちその競技を尊重し、競技の価値を高めることに繋がるのです。

この価値を理解できないのであれば、そのスポーツをやる意味と理由がありません。

すなわち、その場から退場しなければならないということになります。

最後に広瀬氏はこう締めくくります。

“各々がそのスポーツの価値を認め、「やりたいな」と判断し、「勝ちたいな」と思って頑張ること。それがスポーツの基本。”だと。

ビジネスはスポーツとは違います。強制される点があるからです。

ただし、広瀬氏が語るスポーツマンシップにはビジネスに通じるものがあると私は考えます。

おかげさまで顧問先企業から人事制度導入や就業規則策定の依頼を多く受けますが、制度を構築する上で最も重要なのは、「いかに良い仕組みを作るか?」ではありません。

いくら「良い仕組み」を作ったとしても、社員がその価値を理解していなければ、その「仕組み」はうまく機能せず、形骸化し、「仕組み」の終局的目的である「企業価値の向上」に寄与しないことになります。

では、どうすればよいか?

広瀬氏の言葉を労務管理に置き換えれば、以下のようになります。

「ルール」 = 就業規則や人事制度

「審判」  = 経営者や上司

「相手」  = ここでは社外のライバルではなく、「一緒に働く仲間」とします。

この3つを尊重することは、自分が働く会社を尊重することであり、企業価値を高めることにも繋がる。

すなわち、まず最初に我々が取り組むべきは「仕組み作り」ではなく顧問先企業と一体となり「ビジネスマンシップ」の意義や価値をいかに社員に浸透させるか・・・であり、それが人事制度を上手く機能させるための最重要タスクであるということです。

勿論、「審判」である経営者や上司こそ正しいジャッジメントを行うために日々研鑽しなければなりませんし、我々には尊重に値する最適な仕組みを作るための努力が必要であることは言うまでもありません。

広瀬氏のアプローチを参考に、微力ながら「企業価値向上に直結する人事諸制度の構築および導入支援」にこれからも注力して参りたいと思います。