障害者雇用率の改定にかかる影響について
Q.
2026年7月から障害者雇用率が改定されたと聞きました。当社は従業員20名の中小企業ですが、障害者は1名も雇用していません。法定雇用人数に足りていなければ納付金を支払わなければならないと聞きましたが、改定に伴い法違反や納付金の支払対象に該当するのでしょうか。
A.
2026年7月の改定により障害者の法定雇用率(民間企業)は2.7%となり、本稿掲載時点では、従業員数(※1)が37.5名以上の事業主は1名以上の障害者雇用が義務という点及び障害者雇用納付金の対象事業主は従業員数(※1)が100人を超える事業主という点から、現状において法違反や納付金の支払対象に該当しません。しかしながら今後に向けて考えますと、法定雇用人数を超えて障害者雇用に取り組む企業には報奨金(100人超の企業は障害者雇用調整金)の支給がありますし、人材確保の施策として障害者雇用を検討していくとより良いでしょう。
(※1)「障害者雇用率制度」のルールに基づいて従業員数は単純な人数ではなく、常用労働者(1週間の所定労働時間が20時間以上の労働者であって、1年を超えて雇用される者(見込みを含みます。))としてカウントしなければなりません。なお、労働時間によってカウント方法が変わります。また、パートやアルバイトでも条件を満たせば対象に含まれます。
・週30時間以上 → 1名としてカウント
・週20〜30時間未満 → 0.5人としてカウント
●障害者雇用率制度の概要
障害のある人が社会の一員として活躍できる環境を整えるため、企業や公的機関に対して障害者雇用を義務づける「法定雇用率制度」が設けられています。近年、障害者の就労機会をさらに拡大する目的で、法定雇用率の段階的な引き上げが進められています。

(除外率制度について)
除外率制度は、廃止の方向で縮小することとされています。段階的に除外率を引き下げしており2025年4月1日から除外率設定業種ごとにそれぞれ10ポイント引き下げられました。
●障害者を雇用しなければならない対象事業主の義務
・毎年6月1日時点での障害者雇用状況のハローワークへの報告
・障害者の雇用の促進と継続を図るための「障害者雇用推進者」の選任(努力義務)
●障害者雇用納付金・障害者雇用調整金・報奨金について

(※3)支給対象人数が年120人月を超える場合、当該超過人数分への支給額が1人当たり月額23,000円となります。
(※4)支給対象人数が年420人月を超える場合、当該超過人数分への支給額が1人当たり月額16,000円となります。
●雇用分野における障害者差別の禁止と合理的配慮の提供義務等について
1.雇用の分野での障害者差別の禁止
募集・採用、賃金、配置、昇進、教育訓練等の雇用に関するあらゆる局面で、障害者であることを理由とする差別が禁止されています。
2.雇用の分野での合理的配慮の提供義務
事業主は、合理的な配慮(※5)として、過重な負担(※6)とならない範囲で、配慮措置を提供する必要があります。なお、合理的配慮は障害者一人一人の状態や職場の状況等に応じて求められるものが異なり、多様かつ、個別性が高いため、どのような措置をとるかは、事業主と障害者とでよく話し合ったうえで決めていただく必要があります。
(※5)募集・採用時には、障害者と障害者でない人との均等な機会を確保するための措置を、採用後には、障害者と障害者でない人の均等な待遇の確保または障害者の能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するための措置をいいます。
(※6)合理的配慮は「過重な負担」にならない範囲で事業主に講じていただくものであり、合理的配慮の提供義務については、事業主に対して「過重な負担」を及ぼすこととなる場合は除くこととされており、「過重な負担」かどうかは以下の6つの要素を総合的に勘案し、個別に判断されます。
①事業活動への影響の程度 ②実現困難度 ③費用負担の程度
④企業の規模 ⑤企業の財務状況 ⑥公的支援の有無
3.相談体制の整備・苦情処理
事業主は、障害者からの相談に適切に対応するために、相談窓口の設置などの相談体制の整備が義務づけられています。また、障害者に対する差別禁止や合理的配慮の提供に関する事項について、障害者からの苦情を自主的に解決することが努力義務とされています。
●障害者雇用を進める企業のメリット
障害者雇用の取り組みを推進することで、多様性への理解が進み、女性や外国人、高齢者等の誰もが活躍できる職場づくりにつながります。その結果、多様性の効果によって、組織に活力が生まれます。また、企業全体として魅力ある職場となり、人材確保の可能性が拡大すると考えられています。
1.人材の戦力化による経営改善
・業務を細分化し、障害特性や能力に応じた業務選定、働きやすさへの配慮等のポイントを押さえた取り組みをすると障害者が戦力として活躍することができます。
・障害者にかかわらず、社員全体の能力を引き出し、活躍してもらう戦略が身に付き、企業経営の改善につながります。
2.職場環境の改善
・障害者に直接関わる社員を中心に、業務指示や作業手順などを障害者にわかりやすく伝えようと配慮する姿勢が生まれ、こうした姿勢が周囲の社員から組織全体に波及し、コミュニケーションが活性化します。
・さらに、安心して発言・行動できる、心理的安全性の高い職場づくりが実現され、その結果として企業全体の生産性の向上が期待できます。
3.会社全体の労働生産性の改善
・障害者が働きやすいように合理的配慮を実施し、業務の流れや部品等の置き場所を整理することで、健常者社員も作業しやすくなり、会社全体の労働生産性が向上します。
・さらに、障害者が一生懸命働く姿を見て、健常者社員が刺激を受けて、より一層積極的に業務に当たり、意欲や作業効率が向上します。
●まとめ
前述のとおり、法定雇用率の引き上げ等により、企業は従来以上に障害者雇用を積極的に検討する必要がありますが、特に中小企業では、採用チャネルの不足や採用ノウハウの蓄積が課題となりやすい傾向があります。
解決策として、ハローワーク・地域障害者職業センター・就労移行支援事業所等の外部支援機関と連携することも、一つの方法です。外部支援機関の専門的な知見を利用することで、安定した障害者雇用につながる可能性は高くなります。
最後になりますが、障害者雇用納付金の対象企業について、厚生労働省の労働政策審議会分科会では対象規模の拡大案について議論されています。100人以下の中小企業では雇用体制整備が未対応として反対意見も出ているようですが、一定の経過措置を設けつつ拡大していくべきとする意見もあるようです。
今後の検討次第でどういった方向性になるかどうかではありますが、単に法令遵守のための義務的対応に留まらず、障害者雇用を進めることで得られるメリットの部分にも目を向けて自社での対応を検討していくことが重要と考えております。ご参考ください。