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2019.2.6                Since 2011

~ 転ばぬ先の労務管理メルマガ ~

淀川労務協会  “実録”  労務 虎の巻  第69号

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― 社会保険労務士法人 淀川労務協会 -  です。

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このメールマガジンでは、私どもがこれまで顧問サービスとしてご提供し
てきた人事・労務・社会保険等に関する事例や情報の中から、特に皆様に
知って頂きたい事例を厳選しご紹介させて頂いております。

――――目次―――――――――――――――――――――――――――

【ケースNo.131】 [労働時間] タイムカードの開示請求

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ある従業員から、自身の在職期間中のタイムカードのコピーが欲しいと言
われました。
必ず渡さなければならないのでしょうか?

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タイムカードの法的性質からご説明いたします。

実は労働時間の把握に関して明確に定めた法令はありません。
但し、労働基準法で労働時間、休日、深夜業等についての規定が設けられ
ていることから、使用者は、労働時間を適正に把握するなど、労働時間を
適切に管理する責務を有しているものと解されています。

この使用者に課せられた責務を果たす為の具体的手段として行政より示さ
れているのが「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関
する基準」です。

「基準」とは、法律と命令による「法令」と、自主的に遵守することが推
奨される「ガイドライン」との中間に位置するものであり、義務的性質も
含まれたルールです。

これによれば、使用者が始業・終業時刻を確認し、記録する方法として
は、原則として次の1)、2)のいずれかの方法によることとしていま
す。(やむを得ない事情がある場合は、所定の措置を講ずることにより自
己申告制でも可)

1)使用者が、自ら現認することにより確認し、記録すること
2)タイムカード、ICカード等の客観的な記録を基礎として確認し、記録
すること

2)は部下の増加等で物理的に使用者による現認が難しい場合の代替措置
として捉えることが出来ますから、タイムカードやICカード(以下、タイ
ムカード等)による記録は必須事項ではないとすることが出来ます。(つ
まり、使用者が当然に保有すべき情報ではない)

更に、タイムカード等による記録は、始業、終業、(休憩)の起点・終点
となる時刻の記録であり、当該記録と記録の間は労働時間と完全に一致す
るとは限らないという認識も必要です。(タイムカード等の打刻時間に完
全に捉われるのではなく、例えば作業日報等に突き合わせにより整合性を
確認し、場合によっては一部を否認したり、追認する必要があるというこ
と)

総じて、タイムカード等の記録は存在するのであれば労働時間を確認する
上で非常に有力な情報と捉えることが出来るものの、労働時間を把握する
手段として必ずしも義務付けられているものではないので、「労働者の権
利としての媒体」ではなく「使用者がその責務を果たすべく任意に選択し
た媒体」として、その媒体を捉えることが出来ます。

細かくいえばタイムカードの現物そのものは使用者の所有物であるので、
使用者の許可なく労働者はこれを持ち帰ったり、複写したりする権利はあ
りません。つまり、論点は、タイムカード等に打刻された「時間情報」を
使用者が保有するのであれば、その時間情報を当然に開示請求する権利が
労働者にあるのかということになります。

判例としては、労働契約に付随する信義則上の義務として、原則として労
働者にタイムカードの時間情報を開示すべき義務がある(大阪地裁 医療
法人大正会事件H22.7.5)としたものもありますが、下級審判決ですし、
これをもって使用者がタイムカード等の時間情報を当然に開示しなければ
ならないとするまでの根拠とは言えないでしょう。

全ての労働者がタイムカード等による時間情報が必ずしも実労働時間と一
致するものではないという性質を理解しているのであれば良いですが、実
際にはそうではありませんから誰しもがタイムカード等の時間情報を気軽
に得られるようにすることは労働者による都合解釈のリスクの観点からあ
まりお勧めできるものではありません。

但し、賃金支払等の根拠となる労働時間情報と労働者が自認する労働時間
との間に差異があり労働者の主張に一定の正当性が認められる場合にまで
タイムカードの打刻情報の開示を頑なに拒むことは、この対応を契機とし
て争議化するリスクが高く、仮に具体的争議が生じた場合には労働者が主
張する労働時間を反証する根拠として使用者側のタイムカード等による時
間情報の開示は避けられない訳ですから、争議の深刻化を避けるという目
的で請求があった当初から開示した方が良い場合もあります。

ご参考下さい。

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☆本件についてのお問い合わせは淀川労務協会コンサルティング業務部
門までお願いします。
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