厚生労働省から、「新型コロナウイルス感染症による罹患後症状の労災補償における取扱い等について(令和4年基補発0512第1号)」が公表されました。

通達では、

新型コロナウイルス感染症(以下「本感染症」という。)の労災補償の取扱いについては、令和2年4月 28 日付け基補発 0428 第1号「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて」に基づき実施しているところであり、本感染症の罹患後症状についても労災保険給付の対象としてきたところであるが、今般、「新型コロナウイルス感染症診療の手引き 別冊罹患後症状のマネジメント(第1版)」(以下「診療の手引き」という。)が取りまとめられたことを踏まえ、本感染症に係る罹患後症状の労災補償における取扱いを明確にした上で、今後、より一層適切な業務運営の徹底を図ることとするとされました。


1 基本的な考え方
本感染症については、感染性が消失した後であっても、呼吸器や循環器、神経、精神等に係る症状がみられる場合がある。新型コロナウイルス感染後のこれらの症状については、いまだ不明な点が多く、国内における定義は定まっていないが、WHO の定義の「postCOVID-19 condition」を「COVID-19 後の症状」と訳した上で、診療の手引きでは「罹患後症状」とされた。
これらの罹患後症状については、業務により新型コロナウイルスに感染した後の症状であり療養等が必要と認められる場合は、労災保険給付の対象となるものであること。

2 具体的な取扱い
(1)療養補償給付
医師により療養が必要と認められる以下の場合については、本感染症の罹患後症状として、療養補償給付の対象となる。
ア 診療の手引きに記載されている症状に対する療養(感染後ある程度期間を経過して出現した症状も含む)
イ 上記アの症状以外で本感染症により新たに発症した傷病(精神障害も含む)に対する療養
ウ 本感染症の合併症と認められる傷病に対する療養


(2)休業補償給付
罹患後症状により、休業の必要性が医師により認められる場合は、休業補償給付の対象となる。
なお、症状の程度は変動し、数か月以上続く症状や症状消失後に再度出現することもあり、職場復帰の時期や就労時間等の調整が必要となる場合もあることに留意すること。

(3)障害補償給付
診療の手引きによれば、本感染症の罹患後症状はいまだ不明な点が多いものの、時間の経過とともに一般的には改善が見込まれることから、リハビリテーションを含め、対症療法や経過観察での療養が必要な場合には、上記のとおり療養補償給付等の対象となるが、十分な治療を行ってもなお症状の改善の見込みがなく、症状固定と判断され後遺障害が残存する場合は、療養補償給付等は終了し、障害補償給付の対象となる。


3 相談等における対応
本感染症に係る罹患後症状の労災保険給付に関する相談等があった場合には、上記の取扱い等の懇切丁寧な説明に努めることとし、罹患後症状がいまだ不明な点が多いこと等を理由として、労災保険給付の対象とならないと誤解されるような対応は行わないよう徹底すること。

なお、罹患後症状については、「いわゆる”後遺症”」として「後遺症」との用語を用いられる場合も少なくないが、通常は障害補償給付における後遺障害の状態ではなく、療養が必要な状態を意味する場合が多いことから、説明等を行う際に誤解を生じさせることのないよう留意すること。


4 周知
本感染症それ自体はもとより、症状が持続し(罹患後症状があり)、療養等が必要と認められる場合も労災保険給付の対象となることについて、令和2年 11 月 20 日付け基補発 1120 第1号「新型コロナウイルス感染症に係る当面の対応について」により指示したところのほか、あらゆる機会をとらえて、医療機関や被災労働者の方などに周知すること。

5 その他
上記2の(3)により障害補償給付を行う際には、当分の間、事前に当課業務係に協議すること


(出所)厚生労働省 通達「新型コロナウイルス感染症による罹患後症状の労災補償における取扱い等について(令和4年基補発0512第1号)」
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T220516K0010.pdf