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2019.6.11                Since 2011

~ 転ばぬ先の労務管理メルマガ ~

淀川労務協会  “実録”  労務 虎の巻  第76号

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Point1.『関西最大級の規模』

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“本当の人事労務問題解決力”を貴社に提供する労務管理のリーディングオ
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― 社会保険労務士法人 淀川労務協会 -  です。

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このメールマガジンでは、私どもがこれまで顧問サービスとしてご提供し
てきた人事・労務・社会保険等に関する事例や情報の中から、特に皆様に
知って頂きたい事例を厳選しご紹介させて頂いております。

――――目次―――――――――――――――――――――――――――

Vol76.~ コラム ~
「カネカ育休転勤炎上問題」と「働き方改革」と「労使自治の原則」

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今月6日に政府の規制改革推進会議は『限定正社員』について、勤務地な
ど、労働条件の書面化を企業側に義務づける提言をまとめました。

勤務地、職務、勤務時間を通常の正社員よりも制限する限定正社員制度の
導入を促進することにより、「正社員」と「非正規雇用の労働者」の二極
化を緩和し、労働者一人ひとりのワーク ・ライフ・バランスと、企業に
よる優秀な人材の確保・定着を図ることが政府の目的とするところのよう
です。

ただ、これは政府の独りよがりな取り組みという訳でもないようで、独立
行政法人 労働政策研究・研修機構が就活サイトに登録している大学生・
大学院生5601人にアンケートをとったところ、地域限定正社員につい
て、「ぜひ応募したい」と回答した人が24.5%、「一般正社員と処遇の大
きな差がなければ応募したい」が48.1%で、合わせると7割を超える人気
ぶりという結果が出ました。

勤務地限定正社員について許容し得る時間当たりの給与水準の差は、厚労
省による従業員アンケート結果によれば「同水準もしくは1~2割低い水
準」とする回答が約8~9割を超え、同省による導入企業に対するヒアリ
ングでも1~2割低い水準で運用しているケースが多く、労使概ね一致し
ているというところでしょうか。

些か強引ではありますが、ここから企業は「強固な配転命令権」の対価と
して労働者に対し本来あるべき賃金より1~2割程度のプレミアムを支
払っていると読み解くことも出来そうです。

これとは別に政府が推し進めようとしている日本版・同一労働同一賃金と
これに伴う雇用流動化が実現するならば、不本意な配転命令を受け入れて
まで当該企業での勤務継続に拘る理由は薄れ、プレミアムという概念も崩
れる未来となることでしょう。

今回のカネカの問題は、「雇用を守りプレミアムを支払っている訳だから
この程度の配転指示には従って貰わないと組織が機能不全になる」という
旧来型日本企業の経営者意識と、「自らの身にも起こり得る育休復帰後ま
もなく配転という不本意なシチュエーション」に自らを投影し危機感を覚
え、SNSという手段をもって社会問題化することでモラルの領域での配転
拒否権を事実上勝ち取ろうとする大衆との対立構造とみることも出来そう
です。

問題が大きくなった背景としては富士通やコカ・コーラによる45歳以上
をターゲットとする衝撃的なリストラ計画、トヨタや日立等の相次ぐ脱終
身雇用宣言等、漫然とした雇用維持不安の反動としての権利意識高揚とい
う側面もあるかもしれません。

カネカ問題は日本の人事制度・人事戦略の大転換期に差し掛かかりつつあ
ることを象徴する事案であり、限定正社員制度の一般化や、さらにその先
にある同一労働同一賃金による雇用流動化がどのくらいの時期にどれくら
いのレベルで動き出すのか他社動向を見据えた上で旧来型人事制度からの
脱却について社会と歩調を合わせて上手にハンドリングしなければならな
い人事政策として非常に難しい時代に突入したものと受け止める必要があ
るでしょう。

一方で、炎上騒動によるイメージ対策の重要性を過剰に主張する意見もみ
られますが一理はあるものの本質的にはこれは違うのではないかと考えま
す。

労働法には「労働者(労働組合)と使用者が対等な立場で(団体)交渉を
行い、労使の合意に基づいてルールを形成すること」とする個別企業によ
る労使自治の原則があります。

人事制度をどのようにハンドリングしていくかについては、カネカのよう
な労働組合がある企業にあっては労組と協議し今後のあるべき人事制度の
ビジョンを労使で共有していくことが重要であり、その協議の過程で政策
やSNS等による社会的評判を意識し寄り添う必要性はあるものの、非当事
者にイニシアティブをとられることによりその形成が為され、本来あるべ
きはずの当該企業の人事制度が大きく歪められることがあってはならない
と考えます。

労組や従業員というカネカ人事制度の全体像を知る当事者にあっては、今
回の育休転勤問題を一長一短ある人事制度上の諸施策の一事象として捉
え、会社判断と対応を「悪」だとは考えていない可能性もある訳です。

株価の下落云々という指摘もありますが、評判により下落したのであれば
これは一過性のものと捉えるべきであり、一時的株価対策のために自社の
あるべき人事制度を歪め大衆に迎合するという人事判断は非常にナンセン
スだと考えます。
短期投資家は別として長期安定投資家は投資企業にこのような対応を求め
てはいないでしょう。

難しい時代であるからこそ外部が騒がしいときほど冷静な人事判断が求め
られるのではないでしょうか。

 

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☆本件についてのお問い合わせは淀川労務協会コンサルティング業務部
門までお願いします。
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