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~ コンサルティング最前線 ~   『 コミット給 』

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業務部の三浦でございます。

通常、日々の労務相談事例をQ&A方式でご紹介させて頂いております
が、今回はコンサルティング寄りの実例を1つご紹介させていただきま
す。

私は賃金制度や人事評価、目標管理等の人事諸制度のアドバイザリーやコ
ンサルティングを業務の中心に据えておりますので、ベンチャー企業を中
心に各社が構築されている人事諸制度に関与させて頂く機会は多数ござい
ます。

先日、従業員300名程度のあるベンチャー企業様にお呼び頂いたときの
ことです。

その会社は営業部門と技術部門が完全に分かれていて、業務を受託するか
どうかの裁量は100%技術部門が握っています。
営業職は自分がとってきた案件を受けてくれる技術職を社内でアサインし
なければその案件を進捗することはできません。

営業職の悩みは、引き合いがあった顧客の利益率以外の付加価値(将来的
な仕事の発展性、有名企業と実績を作ることによる公告価値、人脈等)を
いくら説明したところで目先の利益率の高い仕事でなければ技術職がなか
なか受けてくれないということでした。

お話をお伺いしているとその原因が同社の賃金制度の一部である「コミッ
ト給」という歩合給(インセンティブ)にあることがわかりました。

コミット給を決めるための業績評価は3箇月毎の年間4Qに分かれてい
て、各Qが始まる前に上司との目標設定面談が為されます。

例えば面談において3か月で200万の売上高が目標設定されると、それ
が達成出来なくとも200万円の10%である20万円が3か月間必ず支
給される仕組みです。
つまり、結果として実績が思うように上がらず売上高が50万円であった
としても200万円の売上目標に対するインセンティブが3か月間は保障
されることになります。

但し・・・です。

お気づきの通り次のQが始まる前の目標設定面談において再度200万円
の目標売上高でコミットするためにはよほど成約度の高い紐付き案件等を
合理的に説明出来なければ上司は首を縦には振らないことになります。前
期で期待を裏切った訳ですから当然です。

ここで問題が生じます。

営業職は直接顧客と接していますから「目先の利益率が低くともその仕事
を受託する価値」を確信すれば長期的な視点で売り上げ実績を持続的に構
築していくためのその仕事を取りたいと思うこともあるでしょう。

一方、直接顧客と接することのない技術職は営業職の言葉を信じていませ
んからスキルレベルの高い技術職ほど目先の利益率の高い仕事を持ってく
る営業職との仕事を好み、そうでない営業職は敬遠されてしまいます。
困った営業職はスキルレベルの低い技術職にアサインする他なくなりま
す。
仕事の出来栄えは言わずもがなです。

結果、長期的な価値を意識して仕事をしていた営業職も、だんだんと目先
の利益を生む仕事に走るように変容していくことはご想像頂けると思いま
す。

同社は確かに事業の収益性は高いのですが、業容の拡大・発展性という点
では少し頭打ち状態にあり、離職率も高く、その原因としてこのコミット
給が少なからず影響していると私は判断しました。

一方、このコミット給を抜本的に変える必要は無いと考えています。

コミット給は実績と対価にタイムラグは生じるものの、制度そのものは目
標設定と実績評価が上手くリンクした優れた仕組みだと思います。

単に前Qの結果だけで次Qの目標が自動的に決まる訳ではなく、仮に実績
が悪くとも次Qの目標設定の根拠を合理的に上司に説明できてば再度高い
目標でコミットすることも理論上は可能です。目標設定で重要な「希望」
の要素も含まれています。
上手く運用しさえすれば、価値ある仕組みでしょう。

変える必要性を考えなければならないのは以下です。

① 3箇月という評価期間の問題

通常の目標管理は半年、乃至、1年で行います。
3箇月という期間はあっという間に次の目標設定面談が意識される期間で
す。
そしてリカバリーが難しい期間です。
「期初は目先の利益率の仕事を受託したけれども、期末にかけて利益率を
意識していこう」という意識が働かない期間と言えます。まず、ここに問
題が考えられます。

② 目標設定面談の運用の問題

目標設定面談において上司と部下が次期目標を決める際の議論が不十分で
ある可能性があります。そして、往々にしてこの原因は上司の面談スキル
のレベルや意識の低さにあります。
前期の目標を達成出来なかった原因、そして、次期目標を決める際に部下
の話にきちんと耳を傾け、問題点を指摘し、ヒントを与える。
面談の場においてそういう最も重要な議論が欠落している可能性がありま
す。
お聞きしてみると、やはり一部では「上司にゴマをすると高い目標でコ
ミットして貰える」という運用が為されていることがわかりました。
このような問題に対しては私のような外部の専門家による目標設定面談へ
の同席や、目標設定の正当性を検証するための二次評価が重要になりま
す。


③ 金額の妥当性

コミット給が過剰である可能性があります。
現行制度の大幅な改定が難しい場合には、何らかのセーフティーネットを
設けるという方法もあります。

④ 目標基準やアセスメントの問題

インセンティブとは別の定性的な目標設定の追加や、賃金制度とは直結し
ないアセスメント(人材の育成や適正配置等を目的とした客観的評価)を
強化することで違う角度から従業員のモチベーションを醸成し意識を変容
出来ることがあります。

他にも色々と原因は考えられますが、以上の点をご指摘、ご指導させて頂
いてその場を後にしました。

人事諸制度は良くも悪くも従業員の意識を変えます。
従業員の意識が代われば、良くも悪くも仕事への取組みが変わります。
仕事への取組みが代われば、良くも悪くも業績や文化が変わります。
業績や文化が変わると会社の未来が変わります。

当協会のスローガンである

「労務を変える、人が輝く、ビジネスが変わる。」

実感として人事諸制度の重要性を少しご理解頂けたのではないかと思いま
す。
ご参考ください。

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☆本件についてのお問い合わせは淀川労務協会コンサルティング業務部_x000D_
門までお願いします。_x000D_
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