業務部の村崎です。

先日、安全衛生の資料を探すため、厚生労働省のHPで災害統計を見ていたとき、平成23年の死亡災害の統計を見て驚きました。「労働者死傷病報告による死傷災害発生状況」という資料の中に、「平成23年業種別局別労働災害発生状況(12月末)」というのがあり、その中の都道府県別の死亡者数で、岩手、宮城、福島の数字が例年と全く違う数字になっていました。原因は、もちろん3月11日に発生した東日本大震災とその直後の津波です。

労働者死傷病報告を基に作成されたデータですから、仕事中に亡くなった方の数字が並んでいるわけですが、例年のこの3県の死亡者数から考えたら異常な数字です。平成22年との比較でみても、岩手県では平成22年に17人の死亡者数だったのが403人に増え、同様に宮城県が22人から786人に、福島県が19人から100人に増加しています。単純にその差が震災によるものではないにしても、例年の数字とは全く比較しようがないような数字をみると、改めて震災の被害の大きさを思い知らされます。すでに死者行方不明者が2万人を超えていますが、その中には仕事中に亡くなった方も大勢含まれていたわけです。水産加工場で魚を加工していたり、商店でお客さんの応対をしていたり、営業で得意先を回っていたり、ごく普通に仕事をしたはずの人達が、突然の地震と津波でなくなったのかと思うと改めて震災の恐ろしさを感じました。

資料には注釈として、「※被害日本大震災を直接の原因とするものを含んでいる」と書かれていますが、そもそも地震が原因の災害を労働災害と呼んでいいのかという疑問がわきます。労災保険でも、地震、台風など天災地変による災害は業務災害とみなさないのが原則です。それが労働災害として認定されるには、地震や台風だけでなく、そのときの事業場の立地条件、作業条件・作業環境等によって、天災地変に際して災害を被りやすい業務の事情が認められなければなりません。今回の地震や津波の場合も、仕事場の立地条件が海に近く津波の被害に遭い易かった、仕事で津波がくるところまで行っていなければ被害に遭うことがなかぅたというような単純な要因で認定されているようで、かなり要件を緩和して取り扱っているのではないかと思います。厚生労働省は、震災直後の早い段階で、仕事中や通勤途上で亡くなった方の労災保険適用基準や取扱いについて発表していましたが、阪神大震災のときの基準を基にしているとはいえ、津波によって会社の建物ごとなくなってしまって確認が困難なケースでも、客観的な状況で判断して労災として認定されているようです。

震災からもうすぐ1年が経ちます。これから復興工事が本格的に始まると、建設関係での死傷事故が心配されます。阪神大震災のときも、兵庫県で労働災害が急激に増えました。復興関連の工事は安全な作業より仕事の早さを求められるため、どうしても事故の発生率が高くなりますが、震災の二次災害のように事故が多発しては元も子もありません。復興工事の現場で作業をされる方は、十分安全対策と取って仕事に従事していただきたいと思います。