業務部の三浦でございます。
今回の新型コロナウィルス問題、正直、発生当初からしばらくは比較的短期に収束するものだと楽観していました。
短期に収束するのであれば収束後の労務管理はコロナ前の比較的ポジティブなマネジメントから大きく方向転換する必要はありません。
つまり、助成金を活用した雇用安定措置等の一時対応で急場を凌ぎ、元の軌道に戻すようなご支援が重要になります。
しかしながらそのような展開はもはや絶望的な状況となっています。
日本とは比較にならないほどの甚大な被害を受けたイタリアでさえ、経済界からの強い要請に押され今月14日から一部商店の営業再開、5月初旬からの段階的経済活動の再開に踏み切ることになりました。
「労働環境の安全が確保され次第、すぐに再開させないと外国企業に取って代わられる。ウイルスに殺され、その後は労働者が食べられずに死んでしまう」とするイタリア最大の経済団体の幹部が訴えに対し、「我々はウイルスの消滅を待てない。ウイルスと共存しながら対策を打ち出す『第2段階』に向けた作業が、すでに始まっている」とコンテ首相が答えた経緯によるものです。
つまりイタリアはゼロリスク思考から脱却し、封鎖や自粛によるウィルス制御と経済活動再開によるウィルス再活性を繰り返しながら、ウィルスとの共存と縮小する経済を長期的に受け入れたことになります。
最近の日本の状況を鑑みれば同様の展開になるのではないかと考えざるを得ません。
そもそも日本は同一労働同一賃金の法整備により雇用流動化を目指す途上にありました。
これは「労働価値」と「労働対価」のオンタイムでの不一致を解消し、肥大化した非正規労働者の縮小と賃金格差を是正するためのものでした。
本来、雇用流動化と解雇規制緩和はセットで為されるべきものですが、日本は後者に手をつけることはありませんでした。緩やかな変革を選択したことになります。
結果、このような有事であってもアメリカのようなレイオフ(一時解雇)はほぼ不可能で、本来は雇用の調整弁であるはずの非正規労働者を含め、助成金等を活用しての雇用継続が社会的に求められる事情にあります。
労働者を休業させ休業手当を支払った企業に最大1人1日8,330円が受給出来る雇用調整助成金についても、企業に一部負担はありますし、社会保険料の負担もあります。
給付日数についても6月末日迄の期間は別枠設定されていますが、年100日、3年150日という制限があり、果たしてこの助成金をフルに活用しなければならないほどの深刻なダメージを長期に渡り受け続けた企業が助成金を活用した後も対象労働者の雇用を維持できるのかと言えば甚だ疑問です。
リーマンショックからの復活の立役者となった中国はもう居ません。
働き方や雇い方の変化は確実に加速します。
急場を凌ぐという発想、犠牲なき着地という発想から脱却し、デフレ、人余り、リモートワーク等による成果主義型、雇用流動化、労働格差を想定した人事制度への変革に他社に先駆けて着手出来た企業が生き残れる「選別のマネジメント」が避けられない時代が来るかもしれないと感じています。
それほど今回の問題は深刻です。