2019年財政検証では、法律で要請されている現行制度に基づく「財政の現況及び見通し」に加えて、年金部会での議論等を踏まえたうえで、一定の制度改正を仮定したオプション試算を実施しました。「社会保障審議会年金部会における議論の整理」(2019年12月27日)においては、今後の年金制度改革でもオプション試算を踏まえたうえで議論を進めていくべきとされており、2024年財政検証でもオプション試算を行うとされています。


厚生労働省が現在検討しているオプション試算の内容(案)として、次の5項目があがっています。

この項目の内容から、将来の年金制度改正の方向性を見ることができ、今後の企業における人事制度への影響、対応を考える点で重要なものとなります。

詳細は下記URLよりご参照ください。

①被用者保険の更なる適用拡大

被用者保険の適用対象となる、短時間労働者の企業規模要件や個人事業所における非適用業種の適用範囲を見直した場合

賃金要件や労働時間要件等についても見直しを加え、一定程度働く被用者を全て被用者保険の適用対象とした場合

②基礎年金の拠出期間延長・給付増額
基礎年金の保険料拠出期間を現行の40年(20~60歳)から45年(20~65歳)に延長し、拠出期間が伸びた分に合わせて基礎年金が増額する仕組みとした場合

③マクロ経済スライドの調整期間の一致
基礎年金(1階)と報酬比例部分(2階)に係るマクロ経済スライドの調整期間を一致させた場合

④在職老齢年金制度
就労し、一定以上の賃金を得ている65歳以上の老齢厚生年金受給者を対象に、当該老齢厚生年金の一部または全部の支給を停止する仕組み(在職老齢年金制度)の見直しを行った場合

⑤標準報酬月額の上限
厚生年金の標準報酬月額の上限(現行65万円)の見直しを行った場合


【参考】2019年財政検証時のオプション試算・参考試算の内容

◆オプションA ・・・被用者保険の更なる適用拡大
1)適用拡大①(125万人ベース); 被用者保険の適用対象となる現行の企業規模要件を廃止した場合
・所定労働時間週20時間以上の短時間労働者の中で、一定以上の収入(月8.8万円以上)のある者(125万人)に適用拡大し、その後は、短時間労働者の中で適用される者の比率が一定と仮定した場合。
2)適用拡大②(325万人ベース); 被用者保険の適用対象となる現行の賃金要件、企業規模要件を廃止した場合
・対象外となる者を除いて、所定労働時間週20時間以上の短時間労働者全体に適用拡大。学生、雇用契約期間1年未満の者、非適用事業所の雇用者については対象外。
3)適用拡大③(1,050万人ベース); 一定の賃金収入(月5.8万円以上)がある全ての被用者へ適用拡大した場合
・学生、雇用契約期間1年未満の者、非適用事業所の雇用者についても適用拡大の対象。(雇用者の中で月5.8万円未満の者のみ対象外)


◆オプションB ・・・保険料拠出期間の延長と受給開始時期の選択
①基礎年金の拠出期間延長; 基礎年金給付算定時の納付年数の上限を現在の40年(20~60歳)から45年(20~65歳)に延長し、納付年数が伸びた分に合わせて基礎年金が増額する仕組みとした場合
②在職老齢年金の見直し; 65歳以上の在職老齢年金の仕組みを緩和・廃止した場合
③厚生年金の加入年齢の上限の引き上げ; 厚生年金の加入年齢の上限を現行の70歳から75歳に延長した場合
④就労延長と受給開始時期の選択肢の拡大; 受給開始可能期間の年齢上限を現行の70歳から75歳まで拡大した場合、65歳を超えて70歳、75歳まで就労した者が、受給開始時期の繰下げを選択すると給付水準がどれだけ上昇するかを試算。
⑤就労延長と受給開始時期の選択肢の拡大(オプションB-④に①~③の制度改正を加味); 上記①~③の制度改正を仮定した上で、受給開始可能期間の年齢上限を現行の70歳から75歳まで拡大した場合、65歳を超えて70歳、75歳まで就労した者が、受給開始時期の繰下げを選択すると給付水準がどれだけ上昇するかを試算。
注;上記④、⑤の試算において、70歳以上の繰下げ増額率は、現行の繰下げ増額率(1月当たり0.7%)を使用すると仮定

(資料)令和6年財政検証の基本的枠組み、オプション試算(案)について

https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/001245419.pdf

(出所)第14回社会保障審議会年金部会

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/nenkin_20240416.html