業務部の三浦です。

ご承知のとおり妊娠を理由に管理職から降格されたとして「降格処分」は違法だと訴えていた理学療法士の女性が最高裁で勝訴されました。メディアにより「マタハラ降格は違法」という言葉が紙面やWEB上に踊り、これを観た方々が直観的に「産後復職時の降格は違法」と誤釈、過剰反応し、これが既成事実化して労働環境の変化が加速化するのではないかと危惧します。

 
 本最高裁判決では、

 1)当該軽易業務への転換及び上記措置により受ける有利な影響並びに上記措置により受ける不利な影響の内容や程度,上記措置に係る事業主による説明の内容その他の経緯や当該労働者の意向等に照らして,当該労働者につき自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき

 2)事業主において当該労働者につき降格の措置を執ることなく軽易業務への転換をさせることに円滑な業務運営や人員の適正配置の確保などの業務上の必要性から支障がある場合であって,その業務上の必要性の内容や程度及び上記の有利又は不利な影響の内容や程度に照らして,上記措置につき同項の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情が存在するとき

 に該当する場合には男女雇用機会均等法9条3項に違反しないとしており、今回の事案はその経緯や事情から考えて、これに該当しないと示された一つの事例に過ぎません。

 そして、大切なのは判決ではなく、「その事情」であり「経緯」です。

 もちろん、このような判決が出た以上は、これを1つの(使用者にとって厳しい)判断軸として以後の労務管理を考えていかなければなりません。

 この判断軸を踏まえて不当降格と判断されないようなリスク対策を施すというのも間違った方向性で、国の事情を考えると女性の妊娠や子育てに配慮した労務管理を今後一層強化していかなければならないことは自明ではあります。

 しかしその一方で時短や育休の対象にならない方々が少なからず不公平感を感じるのも労務の現場であり、その労働心理を社会性が無いと一蹴してしまうのも逆差別に繋がる恐れがあります。

 彼女(彼)らの働く意欲を維持もしくは高めるためにも、立場や役職ではなく、仕事が報酬に反映されやすい人事制度へのシフト等を並行して考えていかなければならないのではないでしょうか。