業務部の村崎です。

AIJ投資顧問が厚生年金基金から運用を委託された年金資金の大半を消失した問題が発覚して依頼、基金に加入されている企業からこのまま加入を続けていて大丈夫かという質問を受けることが多くなりました。幸いAIJに運用を任せていた基金に加入されえている企業はありませんでしたが、ニュース等で基金の運営が逼迫していることがその背景にあるということが報道されているため、加入している基金の財務状況を気にされているようです。また、最近保険料の引き上げを通知されている基金もあり、基金の将来と会社の負担を考えるとこれ以上加入を続けるべきかといった相談も増えています。

AIJ投資顧問に資産運用を任せていた企業の大半は複合型と呼ばれる同業者が集まった基金でしたが、現在存続している厚生年金基金も複合型の基金がほとんどではないかと思います。大企業を中心としたグループ企業で構成された連合型基金は、退職債務の増大等を見越してすでにほとんどが解散や国への代行返上をしています。残された複合型の厚生年金基金も、できるなら解散して国へ代行返上したいのが本音だと思いますが、国へ代行返上を行うには将来の年金給付のため莫大な額の年金資産を国に納めなければなりません。十分な資産があれば代行返上も可能ですが、資産が目減りしていると、追加で企業に負担が求められます。負担を求められても、どの企業もあまり財政的な余裕がない状況では、返上の合意を得ることは困難です。財政状況が悪化しても、低金利で株価も上がらない経済情勢化では、取り敢えずは保険料の値上げくらいしか打つ手がないというのが実情ではないかと思います。

では、そんな基金から脱退はできるのかということですが、これも簡単ではありません。基金から任意脱退するには、一時金として特別掛金の納付を求められます。どの基金も脱退時の被保険者数と報酬額をベースに計算され、企業規模が大きいほど高額になります。被保険者数5人位の会社でも100万円以下ということはまずありえませんし、被保険者数30人位の会社になると間違いなく1000万円以上は請求されます。従業員の同意が得られるかといった問題もありますが、どちらかといえばこの一時金が払えないために残っているという会社が少なくありません。

どの企業も、元々は従業員福祉のために加入されたものですから、継続できればそれに越したことはありません。しかし、厚生年金基金を取り巻く状況は国の年金財政と同じで、明るい見通しというものはありません。残るか脱退するか、脱退できるのか残らざるを得ないのか、真剣に考える時期にきていると思います。