業務部の三浦です。

一般的な会社の懲戒規定は以下のように構成されています。

①戒告 : 始末書をとり将来を戒める。
②減給 : 給与を減じて将来を戒める。ただし、減給1回の額は平均賃金の半日以下とし、処分が複数日にわたる場合でも、その総額は、その月に支給する給与総額の10分の1以内とする。
③出勤停止 : 14日以内の出勤を停止し、その期間中の給与は支給しない。
④昇給停止 : 昇給を停止し、将来を戒める。
⑤降職、降格 : 役付を免じもしくは引き下げる。及び職位・職階を下げる。
⑥諭旨解雇 : 退職を勧奨し、これに従わないときは懲戒解雇とする。
⑦懲戒免職 : 予告期間を設けることなく即時解雇する。

実務経験上、中小零細企業でこれを基準に懲戒処分を考えると以下のような問題が生じます。

③出勤停止 → 余剰人員もいないのに休まれると困る。
④昇給停止 → 定期昇給など無い。もしくは不定期昇給なので効果がない。
⑤降職   → 代わりがいる訳でもなく、対外的な問題含めマイナスが大きい。
  降格   → 人事制度がないので不可能

事実、この仕事をしていても中小企業で③~⑤の処分を見ることはほとんどありません。

つまり、②の減給の制裁の次は現実的には⑥諭旨解雇、⑦懲戒解雇となり、これを有効とするには相当厳しい合理性を整える必要があります。
そして、⑥、⑦が①~⑤と決定的に違うのは、労働者に悔悛を促しリカバリーに期待する要素がなく、会社から退場させる事が目的となっている点です。

②の減給処分というのは1回あたり高くてもせいぜい1万円程度が限度であり、現実的にはそんなにダメージとはならず、悔悛にはなかなか結び付きません。
そして、⑥に飛ぶにはとてもハードルが高く、またその目的も変わってしまうという問題に直面します。

では②と⑥の間を埋める新たな懲戒処分を作れないかと考える訳ですが、懲戒の正当性は過去の労働判例が裏付けとなっているため、作ったところで自信をもって適用できない信頼性に乏しい基準になってしまいます。

大きな不始末を起こした労働者に対し解雇するのではなく悔悛を促せるような中小企業の実用的な懲戒のルールを労働行政が主体となって整えて頂くことに期待します。