淀川労務協会の木村(朋)です。

平成24年10月1日より労働者派遣法改正法が施行されます(改正内容のうち「労働契約申込みみなし制度」の施行日は平成27年10月1日から)。

労働者派遣は”年越し派遣村”にも記憶に新しいように、非正規労働による格差社会を生み出した原因の一つとされているようで、そのせいか法律による事業規制がますます強化されるようです。

今回も各種の改正がありますが、マージン率等の情報公開の義務化など、派遣元事業者にとってインパクトのある内容となっています。

その他の改正のひとつに、グループ企業(親会社および連結子会社)内の派遣会社が一事業年度中にそのグループ企業に派遣する割合(定年退職者を除く)が8割以下に制限される、というものがあります。

これまでも、派遣元事業者が労働者を特定の一社または複数社に限定して派遣する”専ら派遣”は規制されていましが、派遣先企業の開拓営業の努力をしているなどを理由として、事実上黙認されてきました。

しかし、今回の改正によってこのような抜け道はなくなり、規制が厳格なものとなります。

先日、グループ企業から派遣労働者を受け入れている顧問先様とこの”8割規制”について話していたとき、「指揮命令の関係から業務請負にはできないので、出向という形態を取るしか道はなさそうですね。」とおっしゃっていました。

たしかに、業務請負契約においては派遣先企業は直接の指揮命令をすることができませんが、出向契約であればこれまでの労働者派遣と同様に指揮命令をすることができます。

しかも、派遣ではありませんので、派遣受入期間の制限などの頭の痛い問題からも解放されて良いことずくめのように見えます。

労働者派遣や業務請負のように大きな問題点がなさそうな出向契約ですが、現実はそう甘いものではありません。

というのは、出向の実態がたんなる「人材や労働力の提供」であるならば、いくら出向契約という形式を取ろうとも、職業安定法および労働者派遣法に違反してしまいます。

これは意外と知られていないようですが、出向というものは次に挙げる目的を持っているものであれば適法であると解されています。

(1)雇用確保のため

(2)経営指導や技術指導のため

(3)技術習得や業務経験などの能力開発のため

(4)企業グループ内の人事交流のため

ここから分かるように、やはりたんなる人材や労働力の提供という実態であれば、適法性をもつ出向契約だとみなされなくなりますので、安易な出向への切り替えには十分ご注意下さい。