業務部の下村です。
日中の厳しい暑さを耐えた後の事務所への帰路、夏の夕暮れ。
暑さも和らいで、そこに吹く一服の風と湿った夏の匂いが、夕暮れの空の色と相まって火照った体と一日の疲れを優しく癒してくれます。ゆるりとした この時間帯が、夏の中で私の一番好きな時間帯です。皆さんいかがお過ごしでしょうか。

今からおよそ10年前、2008年9月15日。リーマンショックが起こり、日本の企業は大きな嵐に巻き込まれ、多くの企業が倒産していきました。
また、日本ではじめてiphone3Gが発売されたのも10年前、2008年7月11日。10年間であっという間にスマートフォンがない日常生活やビジネスが考えられないようになりました。便利なスマホ・アプリが普及していく代わりにガラケーや据置型家庭ゲーム機、デジカメ、パソコンなどが衰退していき、またスマホとの連携に対応していけないサービスや機器、事業者は市場から退出を余儀なくされています。

次に市場にくる大きな波、嵐といってもいいもの。それはAI(人工知能)、IOT(身の周りのあらゆるモノがインターネットにつながる仕組み)の進化と普及です。
この流れに対応できないサービスや機器、事業者は淘汰されていくことになると思われます。それも早くて数年先には。
また、AIやIOTの進化と普及は、私たち労働者の雇用環境にも大きく影響を及ぼしてきます。これは現在「働き方改革」「長時間労働の是正」「生産性の向上」を国を挙げて推進している流れに強い親和性があるものです。
人が携わる定型事務的業務を大幅に減らすことにより、生産性・効率性があがり、金銭的費用も大幅に減少し、作業時間も著しく減少する。その労働力を非定型業務へ移行していき、高い付加価値を生み出していく。その移行のための再教育や個々人の学び直しを支援する。そういう流れになってきます。
事実、そうなるでしょう。

中国のアリババを創業し、現会長の馬雲(ジャック・マー)は、以前こう言いました。
「嵐が来るぞ」
経営者は常に多方面に高いアンテナを張り、少しでも異変、潮の変わり目を察知し、従業員たちに早く伝える「嵐が来るぞ」と。それが経営者の重要な仕事、役割。いきなり言われても対応するすべもなく嵐に飲み込まれる。しかし早く察知し情報を伝えることで、嵐に備えることができる。多くの人は変化は嫌いだ。しかし変化の波がくるのならば、それを受け入れ、早くから少しずつ準備することで、被害を最小限に抑えることができる。逆に変化の波を自分たちのものにし、その変化に対応した自分たちが次の標準を作り、先頭に立つことができる。利益を得ることができる。-このようなことを話していました。

では、どうすればいいのか。何もかも今の仕事がなくなってしまうのか。取って代わられるのか。
― そんなことはありません。
人が人とかかわることで人は人生を生きていく以上、全てがAIに代わることはありません。
人が人に求めるものは何か(何に、どう代わるのか)、それはどこにあり(どこに代わり)、どのように提供すればいいのか(提供、かかわり方がどう変わるのか)。その量と質はどう変わるのか。そしてそこに私たちは対応できる(する)のか否か。答えはここにあります。

アメリカ合衆国大統領 ジョン・F・ケネディは、大統領就任演説の際「国があなたのために何をしてくれるのかを問うのではなく、あなたが国のために何を成すことができるのかを問うて欲しい。」と言いました。

この大きな変革の波に、会社はなにか策を考えているだろう、なんとかしてくれるだろう、それを考えるのは私たちでなく経営者だ・・・など思う方々もいるかもしれません。
確かに、会社や経営者は多方面に高いアンテナをはり、その立場から多くの情報を得ることができ、見識もあり、対応策を考え、Visionを示し、従業員を動かす責務があります。

しかし、日常、顧客と直接に仕事を行っているのは私たち従業員です。今後のAIの進化と普及による私たちにおけるメリット、それによるサービスの仕組みやシステムの変革、また顧客ニーズの変化や新しい付加価値・サービスのヒントもリアルに感じ取り、考えることができます。一番顧客に近いからこそ、日常意識をもって接していれば、必ずその現場に私たちが生きていく答えはあります。

そして一番大事なことは、自分たちが変化の波を早く察知し、受け入れ、対応し、波にのること。早く対応すればするほど、波の負担も軽くなる。そして波を自分たちのものにし、新しい波にあった乗り方をいち早く作り出し広めていくことができる。

自分たちの今行っている仕事・サービスのやり方が変わらざるを得ない事実を認識し、受け入れる。それは全く違ったアプローチのもの、結果として従前と全く異なる姿になるかもしれない。その変化への負担はかなり大きくなるかもしれない。それを受け入れ、少しでも軽くしながら、新しい仕事・サービスのやり方、かかわり方を探し作り上げ、逆に顧客に提案し標準にしていく。

世の中にはAIへの仕事の代替で、人件費の削減・人員の削減、事業部門の撤退を考えている経営者も少なくありません。それは一つの考えでもあり、色々な背景から否定することはできません。しかし、それは初めから考えることではなく、今、縁があって一緒に働いている経営者・従業員が互いに変化とその負担を共有しながら、どう生き残っていくのか、私たちがどう変わっていくべきなのかを、まずは社内でともに考え共有することが最優先であり、経営者だけで考えるのではなく、従業員とともに、建設的な意見に耳を傾け、労使一体となって進んでいくことが必要であると考えます。

経営者にも、そして私たちにも「覚悟」が問われています。
覚悟がある者のみ、覚悟が共有されている会社のみ、新しい波に乗り生き残れるのだと思います。

進化論を発表したダーウィンは言っています。
「最も強い者が生き残るのではなく、 最も賢い者が生き延びるのでもない。 唯一生き残るのは、変化できる者である。」と。

その「覚悟」。
あなたにはありますか。